Menu

今年最高のインフレーション 4.4%超へ

Philippine Statistics Authority (フィリピン統計庁:PSA)がインフレ率を8/8に発表した。事前の予想通りインフレは悪化しており中央銀行が目標とする4%を超えて4.4%の発表となった。

2024年7月の消費者物価(インフレ)統計の発表についてはフィリピン中央銀行(BSP)は、7月31日、「2024年7月の総合消費者物価上昇率(総合インフレ率、前年同月比、2018年基準)は4.0%~4.8%の範囲内であったと推定している」と発表していたこともあって、市場は冷静な反応だった。すなわち、7月の総合インフレ率は2023年11月の4.1%以来8カ月ぶりに4%台の4.4%へ上昇、政府の年間インフレ目標2%~4%の上限を突破した。

経済が腰倒れするとすればインフレ懸念が筆頭である。それでもフィリピン経済は強気とみる向きが増えつつある。 理由はいくつあるが、1つ目は財政収支の健全化。2つ目は金融緩和。3つは外国企業の投資加速だ。

  フィリピンの上半期のGDP成長率は6.3%であった。貿易収支も大きな回復を見せている。さらに、フィリピン中央銀行(BSP)によると、2024年7月の月間国際総合収支(BOP)は6,200万米ドルの黒字となり、前年同月の5,300万米ドルの赤字から黒字に転じた。7月の黒字は、中央銀行の海外投資からの純利益の流入と政府の中央銀行への外貨預金等を反映した結果だ。 8月15日に開催された2024年5回目のフィリピン中央銀行(BSP)金融委員会(MB)定期会合において、政策金利体系の0.25%引き下げが決定された。これまで6会合連続で金利が据え置かれてきたが、7会合ぶりに政策金利変更が決定された。また利下げは、2020年11月19日の0.25%引き下げ決定以来、3年9カ月ぶりだ。背景にはアキレス腱のインフレはこれ以上悪化しないという楽観視が多数派であること。景気については、「上半期のGDP成長率は6.0%と堅調、失業率は低下している。公共投資やインフレ圧力の緩和、良好な雇用状況が経済活動を支えるだろう」と予想しているからだ。

実際に、下支えとなる海外投資が過去最高レベルを更新している。 8月15日発表のBOIの2023年の投資認可額は1兆2,600億ペソに達し、2022年の7,290億ペソを73%上回るとともに1兆ペソ超えとなっている。2024年についても、7カ月間の投資認可額が前年同期比65%増の1兆1,500億ペソに達したと発表されている。日系企業もニトリフィリピン、トヨタ、太平洋セメントなど積極的に進出をすすめており、今後もDTI(貿易産業省)を筆頭に日系企業のフィリピン投資を加速させる活動は活発化するだろう。OFWの送金も好調に回復して外貨を稼いでいる。

各指標をみる限り8月の折り返し時点ではフィリピン経済は順調に回復を見せており、格付け機関も前向きな評価を発表している、S&P、ムーディーズなどは現状維持だが日系の格付け機関はA-まだ1つ格付けをあげている。夏場でフィリピン株式市場は底固めして年末に向けて上昇展開があるかもしれない。このままGDP成長が続きインフレがBSPの目標である2%から4%で収まるようになれば、経済は加速していくことも想定できるだろう。

参考資料:フィリピン統計庁(PSA)レポート

(2024年8月20日)
上へ行く